2009
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<2.最高裁上告理由書> 今利智也さん・理絵さんの裁判闘争

<2.最高裁上告理由書> 今利智也さん・理絵さんの裁判闘争

東京高等裁判所平成16年第(ネオ)第715号損害賠償等請求上告事件

人  今利理絵 外1名被上告人
高塚義夫 外7名


平成16年10月5日

最高裁判所 御中

上告人訴訟代理人                           
弁護士  今 井 三 義
同    稲 見 友 之
同    福 本 修 也

第1 憲法20条1項等違反(民訴法312条1項)

1 原判決は,原判決が認定した相手方らによる権利侵害行為事実とは,「被控訴人高塚夫妻らは,平成7年10月23日から同月27日までの間及び平成9年1月10日から同年6月9日までの間の2度にわたって,控訴人理絵をあらかじめ用意したマンション等の居室に同行するよう求め,これに同意しない同控訴人の腕を取って抱きかかえるようにし,あるいは路上に仰向けになって抵抗する同控訴人を抱き起こして車に乗せ,上記各居室に連れて行ったものであり,上記各居室においては,玄関ドアの防犯チェーンに南京錠を,窓にはボルト付の金属棒,サッシ止め及びビニールシートを取り付けたり,ふすまをはずしたり,トイレの鍵をかからなくしたりして,控訴人理絵が居室から逃げ出すことを防ぐための細工をし,同控訴人を常時被控訴人高塚夫妻らの監視下に置いて,同控訴人の自由な精神活動・身体的活動を制約するような生活環境下に少なくない期間にわたって留め置き,その間,同控訴人に対し,統一協会の教義や活動の問題点等について話し合いを求めたことが認められる」(原判決~頁)と認定し,上告人理絵の信教の自由(憲法20条1項)及び身体の自由(憲法13条,18条)に対する人権侵害行為を認めておきながら,①「控訴人理絵が被控訴人高塚夫妻と生活している期間において,同控訴人夫婦から受けている制約から逃れるために暴れるなどして抵抗した様子はうかがわれない」(原判決頁),②「同控訴人が統一協会に対する信仰を考え直す機会にしてもらいたいという願い」(同頁),③「控訴人理絵に対し危害を加えてでも改心させようとする意思は全くうかがわれない」(同頁)との点を斟酌し,「控訴人理絵に対して損害賠償をもって償わなければならないほどの違法性を帯びた逮捕,監禁に当たるということはできず,また,統一協会からの脱会強要に当たると評価することもできない」(原判決頁)と判示しているのである。

2 しかし,厳重な逃走防止措置を講じられた密室に現に監禁されている被害者において,監禁を逃れるために暴れるなどといった無駄な抵抗を試みたかどうかという事実は,当該監禁行為の違法性に何ら影響を与える要素とはなり得ないはずである。

 また,「統一協会に対する信仰を考え直す機会にしてもらいたい」という願いや動機は,(相手が子供とはいえ)独立した人格と意思を有する成人の信仰の自由に対する干渉の意思であって,それが監禁行為の違法性を減じる要素とはなり得ないことは当然である。

 さらに,「危害を加えてでも改心させようとする意思」の有無に至っては,何ゆえこれが違法性を減じる要素になるのか理解不能である。「危害」の意味が傷害の意味であるとすれば,親が子に傷害まで負わせる意思がないのは当たり前のことである。そして,自由を束縛する監禁を手段として改心(改宗)を求めるという本件行為に加えて更に悪質な危害を加える意思がなかったということは,本件行為の違法性を減じる理由にはなりえない(原判決の論理は,傷害事件の被告人に傷害の故意から更に進んだ殺人の故意がなっかったという理由で当該傷害行為の違法性が減じるというのと同じである)。

 以上のとおり,原判決は,本件被侵害利益は信仰の自由及び身体の自由という人権侵害に対し,上記指摘のような違法性を減じる要素となり得ない事実をもって違法性がないとして人権保障をないがしろにしているものであり,同判決自体,憲法が保障する基本的人権に対する重大な侵害であるというべきである。

第2 理由齟齬の違法(民訴法312条1項)

1 原判決は「控訴人智也は,自己が運転してきた自動車に乗ろうとした際,控訴人理絵の状況に気付き,同控訴人の方に駆け寄ろうとしたが,その前に立ちふさがった被控訴人若林を押しのけようとして同被控訴人にぶつかり,勢い余って前のめりになって転倒し,アスファルトの地面に四つんばいの姿勢になり,眼鏡が外れた」(原判決8~9頁),「控訴人智也の負った上記負傷は,当該負傷部位をアスファルトに強く擦過することによって生じたものと認められるが,・・・・・控訴人智也の傷害は,前記1に認定したとおり,同控訴人の前に立ちふさがった被控訴人若林にぶつかって勢い余って自ら四つんばいの状態で転倒したことによって生じたものと認めるのが相当である。そうすると,被控訴人吉雄及び同若林による控訴人智也に対する暴行の事実を認めることはできず」(原判決頁)と判示し,被上告人らの不法行為責任を否定している。

2 原判決は,上告人智也において,妻が目の前で拉致されるのを見てこれを助けるために妻の方に行こうと駆け寄ったのに対し,上告人理絵拉致実行犯の共犯である被上告人若林は,同上告人の救出に向かう上告人智也の行く手を阻むために立ちふさがって妨害し(事前に決められた同被上告人の役割分担は正に上告人智也の排除役だったものである),これにより転倒した同上告人が傷害を負ったものであること,すなわち,上記妨害行為の結果として同上告人に傷害が生じたことを認めているのであるから,同被上告人及びこれと上告人理絵拉致につき共謀関係にある被上告人ら全員において,共同不法行為として損害賠償責任を負うことは当然であるにもかかわらず,原判決は結論において不法行為責任を否定しており,判決の理由には重大な齟齬があるというべきである。

                                                         
以 上

 

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